スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

食べ放題の価格と食べ過ぎと味への満足度

多くの方が、食べ放題プランで食べ過ぎてしまった経験があると思う。
後で「あんなに食べなければよかった」と後悔した方も少なくないだろう。
しかし、通常の消費者モデルでは、後悔するほど食べ過ぎてしまう行動をうまく説明できない。

この論文のキモは、「価格以上に元を取ろうとする」心理を組み込むことで、
食べ放題で後悔するほど食べ過ぎてしまうメカニズムを理論的に明らかにし、
食べ放題の価格が食べ過ぎや味への満足度に影響することを示した点だ。

“Fixed Price Paradox: Conflicting Effects of “All-You-Can-Eat” Pricing”
David R. Just and Brian Wansink
Forthcoming, Review of Economics and Statistics
おすすめ度:
★★★★☆ [星四つ]  食べ過ぎが気になる研究者へ
★★★☆☆ [星三つ] 農業経済学関係者へ
★☆☆☆☆ [星一つ]  その他の方々へ

ここでの「後悔するほど食べ過ぎる」とは、「食糧消費の限界効用が負になっても食べ続ける」
ということだ。通常の消費者モデルでは、食べ放題なら限界効用がゼロになるまで食べ続ける
だけで、後悔するほど食べ過ぎることはない。また、食べる量は食べ放題の価格に影響されない。

この論文では、食べ過ぎを説明するために、効用関数をTransaction効用と
Hedonic Consumption効用に分けている。Transaction効用の限界効用は、
食べれば食べるほど(食料の平均価格が下がるほど)増加し、
「価格以上に元を取ろうとする」心理を表している。
Hedonic consumption効用の限界効用は、通常の効用関数に似ており、
食べ始めは増加するが、最適な量を超えると減少し始める。
より詳しくは、論文を参照して欲しい。

実証では、イリノイ州にある食べ放題のピザ・レストランでフィールド実験(?)を実施している。
火曜から木曜のランチに来た客で、入店時の短いアンケートに答えてくれた客に、ドリンク券のみ
(コントロール・グループ)もしくはドリンク券+50%割引き券(トリートメント・グループ)を
ランダムに配布している。入店時のアンケートはこの論文とは全く関係ないもので、
真の目的は客に知らされていない。ちなみに、同じ商品を異なる価格で提供するのは
法律上問題があるらしく、割引券を使うことになったらしい。

主な結果は、
 • 食べ放題の価格が上がると、食べる量が増える。通常料金の客の方が、
   50%割引の客より、平均30%(365カロリー)多く食べた。
 • 食べ放題の価格が上がると、客の味への満足度が下がる。
 • 多く食べた客ほど、味への満足度が低い傾向がある。
これら結果は、食べ放題での食べ過ぎを説明する上で、「元を取ろうとする」心理が
重要な役割を果たしていることを実証している。また、「$5のビュッフェより
$10のビュッフェの方が太る原因になりやすい」など、肥満対策に応用できそうな
示唆も導き出せる。

味への満足度を食後にのみ聞いている点など色々と問題点はあるが、
総じて面白い論文だと思う。また、問題があるということは、改善・発展の余地が
あるということなので、興味のある方はぜひチェックして欲しい。
スポンサーサイト

輸出することで中国企業の生産性は本当に向上したのか?

「輸出の企業生産性への影響の因果関係」は、既に数多くの研究者によって
分析されつくされた感がある。そんな中、この論文の肝は、
アジア金融危機の通貨為替への影響を利用した自然実験を用いて、
より厳密に因果関係を推計したところにある。

“Exporting and Firm Performance: Chinese Exporters
 and the Asian Financial Crisis”

Albert Park, Dean Yang, Xinzheng Shi, and Yuan Jiang
Forthcoming, Review of Economics and Statistics.
おすすめ度:
★★★★☆ [星四つ]  「因果関係」が気になる方へ
★★☆☆☆ [星二つ]  中国研究関係者へ
★☆☆☆☆ [星一つ]  その他の方々へ

「輸出の企業生産性への影響の因果関係」を正確に推計するのは、思いのほか難しい。
例えば、「輸出が生産性を向上させたのではなく、生産性がもともと高かったので輸出している」
のかもしれない。また、「企業の生産性と輸出量は両方とも、社長の手腕や政治家とのコネなど
に依存しており、輸出自体は生産性向上の原因ではない」かもしれない。これまで多くの論文が、
どうにか上記のような可能性をコントロールして、より正確な因果関係を推計しようと腐心してきた。

この論文では、「アジア金融危機によって、インドネシア・ルピア、フィリピン・ペソ、韓国ウォン
などの為替は突発的に減価したが、中国元はほとんど影響されなかった」状況を自然実験として
利用する。このような為替の変化により、上記のアジア諸国が主な輸出先の中国企業は、
その他の国が主な輸出先の中国企業に比べ、輸出の伸びが急激に減速することになる。そして、
そのような予期せぬ輸出減速にみまわれた企業と、ほとんど影響されなかった企業とを
比べることで、「輸出の企業生産性への影響の因果関係」を推計する。

主な結果として、
  - 中国輸出企業の1995-2000年における(全要素)生産性向上の約13%は、
     10%の輸出量増加によって説明できる。
  - そのような輸出の生産性への影響は、輸出による学習効果(Learning by Exporting)
     による可能性が高い。
ことを実証している。このような結果は、溢出効果(Spillover effect)と合わせて、
輸出促進のために国税を使ういい論拠になるかもしれない。
まぁ、その辺は費用対効果によるが。 

この論文は、Albert Parkがセミナーで発表した論文だ。個人的には面白い論文だと思うのだが、
推計手法よりもストーリー重視の方にはあまりお勧めできない論文だ。
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
プロフィール

sshimo

回り道して日本に戻って来た研究者。もろ農経だと需要がないので、かろうじて農経でがんばっています。

詳細は、「はじめに」を参照してください。

カテゴリ
EJ (1)
JPE (2)
全ての記事の一覧

記事タイトルの一覧を表示する

過去のアーカイブ
かろうじて農経なアンテナ
最新コメント
最新トラックバック
RSSリンクの表示
カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。