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1日4杯超コーヒーを飲むと死亡リスクが高まる?

タイトルのような新聞記事を読んだ。
また出たよ、この手の研究…と思い元論文をチェックしてみた。
結論から言うと、私ならデスク・リジェクトするレベルの論文だ。

“Association of Coffee Consumption with All-Cause and Cardiovascular Disease Mortality”

Junxiu Liu and et al.
2013. Mayo Clinic Proceedings, v88, n10

コーヒー消費量と死亡率の相関の推定には、Cox proportional hazards regression modelを使っている。一応、以下の要素もコントロールしている:年齢、検査した年、ディカフェ・コーヒーの消費、普通のお茶の消費、ディカフェやハーブ茶の消費、運動不足、体格指数、 喫煙の有無、酒類の消費、糖尿病、高血圧、高コレステロール、家族の心疾患履歴。  

また、論文中でも常に「相関」と言っており、「因果関係」については言及していない。新聞記事でも「こうした数字から「コーヒーが早死にを招く」と結論付けることはできない。「強いストレスを抱えた人がコーヒーを毎日10杯も飲み続けて死亡したというような場合は、コーヒーのせいでなくストレスが原因と考えられる」と、同博士は説明する。」と、良識的に聞こえる。 

ただ、本当に良識があるなら、論文の結論で“On the basis of these findings, it seems appropriate to suggest that younger people avoid heavy coffee consumption (ie, averaging >4 cups per day).”って書くなよ…。新聞記者に言っていることと、書いていることに整合性がない。

加えて、まず最初に疑うべきは所得レベルや職業の影響だろう。居住環境や人種なども考慮すべきだと思う。「喫煙の有無、酒類の消費、糖尿病、高血圧、高コレステロール」などをコントロールしているのだから、ストレスの影響は結構考慮されている気がするのだが。

それにしても、これでパブリッシュできるのか…。有名な研究者たちなのかなぁ?Mayoのイメージが急激に下がった。  
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干ばつは人的資本を向上させるのか? インドのケース

今回は、先日のセミナーでUCLAのManisha Shahが発表してくれた論文だ。
干ばつの子供の能力への影響を分析した論文だ。

途上国における干ばつに関する既存の研究では、所得や健康への影響が主に分析されてきたが、この論文は「児童労働の需要」への影響を考慮に入れている。キモは、干ばつで親の仕事が減ると児童労働の需要が減る → 子供が学校に行く日数が増える → 子供の成績が上がる、という可能性を実証した点だ。  

“Could Droughts Improve Human Capital? Evidence from India”
Manisha Shah and Bryce Millett Steinberg
2013. Working Paper

データは、インドにおけるAnnual Status of Education Report (ASER) 2005-2009のデータを主に使っている。ASERでは農村の5-16歳の子供300万人以上(3,229,037)を調査しており、簡単な計算と読み書きのテスト結果も記録している。このテスト結果が被説明変数だ。干ばつ(月降水量)に関してはデラウェア大学のデータを使っている。他にも、National Family Health Survey-2やthe National Sample Survey Round 62のデータをつかって頑健性チェックをしている。

主な結果は、
 ・干ばつの年は前年と比べ、計算テストの点数が0.1点高く、就学率も2%ポイント高い。 
 ・降雨に恵まれた年は、計算テストは0.05点低く、就学率も下がる。
 ・Teacher Absencesや学校給食などへの干ばつの影響はみられなかった。
他にも色々と頑健性チェックをして、児童労働の需要への代替効果が原因の可能性が大きいと結論付けている。

ストーリーは面白いし、分析も丁寧だ。ただ、実質的影響は小さく、サンプルサイズが大きいゆえの有意な結果にみえてしまう。また、子供が学校に行かない理由が、本当に児童労働のせいなのかは疑問の余地がある。主な理由が学校の質だとしたら、たとえ暇になっても学校には行かないだろう。でも、データがないのでこの可能性は検証できないらしい

ちなみに、中国の農村では繁忙期には学校自体が休みになることが多いので、こういう影響はみられないかもしれない。

宗教は本当に「人類にとってのアヘン」なのか? 宗教への信仰心と経済的豊さの関係

先日、ウォーリック大学のサーシャ・ベッカーのセミナーがあった。その時発表してくれたのが今回の論文だ。

カール・マルクスは宗教のことを「Opium of the People」(人類にとってのアヘン[=麻薬])といって、経済的に豊かになると宗教への信仰心が弱くなることを予想していた。この予想は、国際比較や1国内のクロス・セクション・データを使って計量的に実証されている。 

そんな中この論文は、プロイセン王国のパネル・データを用いて、宗教への信仰心と経済的豊さの因果関係を再検証している。キモは、より厳密な分析手法を用いると、宗教への信仰心と経済的豊さの間の相関が消えることを示した点だ。

“Not the Opium of the People: Income and Secularization in a Panel of Prussian Counties”
Sascha Becker and Ludger Woessmann
2013, Working Paper.

著者らは、プロイセン王国の一部(現ドイツ北部)の1886-1911年におけるセンサスデータを使って、郡レベルのパネルデータを構築している。宗教への信仰心は聖餐式(Holy Communion)への参加者数、経済的豊かさは小学校教師の給与で測っている。

分析自体はシンプルで、以下の3つのモデルの推計結果を比較している:
 (1)プールド・クロス・セクションで郡の固定効果だけをコントロール、
 (2)プールド・クロス・セクションで年の固定効果だけをコントロール、
 (3)パネルで郡と年の固定効果をコントロール。
(1)と(2)では聖餐式への参加者数と小学校教師の給与の間に有意な負の相関がみられたが、(3)では有意な相関はみられなかった。つまり、相関はあるものの、宗教への信仰心が弱くなったのは経済的豊かさが要因ではないかもしれない。

プレゼンはすごくうまくて勉強になった。しかし、論文自体は彼の以前のQJE論文(Was Weber Wrong?)の副産物のようで小粒だった。

一方、夕飯のときに聞いた話が面白かった。上記のQJE論文のRevisionで大物マクロ編集者から「もっとデータがあるはずだから、探し出してもっと頑健性チェックしなさい」と言われ、9ヶ月かけて追加のデータを集めたらしい(特別な許可をもらって地下蔵書庫にもぐりこんだらしい)。そして、追加の頑健性チェックに編集者も納得したのだが、「追加の頑健性チェックは脚注にいれてくれ」と言われたらしい。つまり、脚注一つに9ヶ月費やしたわけだ…。QJE恐るべし。
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