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文化大革命と親心と世帯内資源配分

最近もっともツボにはまった論文を紹介したい。

文化大革命期に行われた上山下郷運動をご存知だろうか? 
都市部の中学卒業生を辺境の農村に送り徴農した下放政策だ。
主点だけ大雑把に説明すると、この政策の対象となる子供がいる世帯は、
対象者を最低一人、農村へ下放しなくてはならなかった。
別の言い方をすると、対象となる子供が二人以上いる世帯では、一人さえ下放させれば、
「誰を下放するか」や「他の子も下放させるかどうか」は親が決めれた。

今回の論文は、このような状況下での親心を絶妙に理論モデル化して実証している。
肝は、「罪悪感(Guilt)」という経済学では新しい概念を、親の意志決定過程に
組み込んだところだ。

“Altruism, Favoritism, and Guilt in the Allocation of Family Resources: Sophie’s Choice in Mao’s Mass Send-Down Movement”
Hongbin Li, Mark Rosenzweig, and Junsen Zhang
Journal of Political Economy. 2010. v118(1): forthcoming.
おすすめ度:
★★★★★ [星五つ]  開発経済学関係者へ
★★★★★ [星五つ]  中国研究関係者へ
★★★☆☆ [星三つ]  その他の方々へ

まずは理論的に、親一人子供二人の世帯モデルを用いて、「利他主義(Altruism)」や
「えこひいき(Favoritism)」といった既存の枠組みと「罪悪感」の違いを明らかにしている。
実証では、双子のデータを使って、内生性(Endogeneity)への対策もばっちりだ。そして、
三つの要素(子供の所得稼得能力、下放された期間の長さ、親から子供への結婚祝いの額)
の関係が一卵性双生児の間でどう異なるかを推定することで、以下の三点を明らかにした。
  他の条件が同じならば、
   1.所得稼得能力のより低い子が下放されやすかった。
   2.所得稼得能力のより低い子に、より多く資源配分する傾向がある(利他主義)。
   3.より長く下放した子供に、より多く資源配分する傾向がある(罪悪感)。
要するに、「罪悪感」が親の意志決定過程で重要な役割を果たしうることを実証したわけだ。

主点ではないが、ラボ実験やフィールド実験で「行動に影響するほど強い罪悪感」を
被験者に感じさせるのは難しい、という議論も興味深かった。

歴史絡みの論文が好きな同僚のおかげで、私もその魅力にハマってしまった。
そしてこの論文は、まさに彼の研究と私の研究の中間領域なのだ。
いつか、彼と一緒にこんな論文を書けたらいいなぁ。
しかし、さすがにJPEは…、まぁ、みなまで言うまい。
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