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人道的食糧援助は"紛争の手助け"になっているのか?

現行の人道的援助は本当に被援助国のためになっているのか?
これまで様々な切り口から検討されている問いだ。
たとえば、援助依存や戦略的援助などの問題があげられる。

今回の論文は人道的援助の中でも食糧援助に注目し、
紛争発生や紛争期間との関係を考察している。
キモは、「食糧援助は現物支給のため輸送中に窃盗や略奪されやすい」ことに注目し、
食糧援助が紛争を始めるまたは長引かせる手助けになっている可能性を
厳密に実証している点だ。

“Aiding Conflict: the Impact of U.S. Food Aid in Civil War”
Nathan Nunn and Nancy Qian
2012, Working Paper
おすすめ度:
★★★★☆ [星四つ] 途上国の食糧問題の研究者へ 
★★★☆☆ [星三つ] その他の開発経済学者へ 
★★☆☆☆ [星二つ] その他の方へ  

実証には、OECD以外の国の1971年から2006年のパネルデータを使っている。
データ元は、UCDP/UPRIO Armed Conflict Dataset(紛争関連)、
FAOSTAT(食糧援助関連)、そしてUSDA(米国の小麦生産関連)だ。
被説明変数は、武力紛争の発生、始まり、そして期間。
メインの説明変数は、米国からの食糧援助小麦の量だ。

実証する上での難題は、食糧援助と紛争の同時性や逆の因果関係である。
この論文では、経時的に変化しない国特有の性質(Country fixed effects)と
地域内に共通する経時的変化(Region-year fixed effects)をコントロールした上で、
食糧援助小麦量の操作変数として「援助の前年の米国の小麦生産量」と
「その国が米国から食糧援助をうける可能性」の交差項を採用している。
米国の食糧援助小麦量は前年の米国の小麦生産量に大きく依存しているが、
小麦生産量の変化は米国内の天候ショックしだいで途上国の状況とは無関係、
という性質を利用している。そして、「米国から食糧援助をうける可能性」と
交差することでクロスセクションの変化量を確保している。
より細かい証拠や頑健性チェックは論文を参照してほしい。

主な結果は、
 ・ 同時性や逆の因果関係を無視してOLSで推計した場合、食糧援助小麦の紛争発生への
   有意な影響はみられなかった。
 ・ 同時性や逆の因果関係を操作して推計すると、食糧援助小麦の国内紛争発生や期間
   (特に小規模の紛争)への有意な正の影響がみられた。
 ・ たとえば、米国からの食糧援助小麦が1,000メートルトン(MT)増えると、国内紛争が
   発生する確率が0.38パーセントポイント上がる。ちなみに、米国からの食糧援助小麦の
   平均量は27,600MTなので、平均で10%増やすと2,760MT増えることになる。
 ・ 一方、国家間紛争発生への有意な影響はみられなかった。
 ・ 米国からの食糧援助小麦が増えることで、他国もしくは他形態の援助が
   クラウディングアウトされている証拠はみられなかった。
 ・ 民族多様性の低い国、および交通基盤のしっかりした国では、
   食糧援助小麦の国内紛争への影響が小さかった。
これら結果は、援助食糧が窃盗や略奪されることで、被援助国の不利益につながる
可能性を定量的に示している。ただ、だからといって食糧援助が有害というわけではない。
今後、食糧援助による便益と損失の関係をより包括的に定量分析する必要がある。
特に、乳幼児死亡率など健康や栄養への影響は重視されるべきだ。
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回り道して日本に戻って来た研究者。もろ農経だと需要がないので、かろうじて農経でがんばっています。

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