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宗教は本当に「人類にとってのアヘン」なのか? 宗教への信仰心と経済的豊さの関係

先日、ウォーリック大学のサーシャ・ベッカーのセミナーがあった。その時発表してくれたのが今回の論文だ。

カール・マルクスは宗教のことを「Opium of the People」(人類にとってのアヘン[=麻薬])といって、経済的に豊かになると宗教への信仰心が弱くなることを予想していた。この予想は、国際比較や1国内のクロス・セクション・データを使って計量的に実証されている。 

そんな中この論文は、プロイセン王国のパネル・データを用いて、宗教への信仰心と経済的豊さの因果関係を再検証している。キモは、より厳密な分析手法を用いると、宗教への信仰心と経済的豊さの間の相関が消えることを示した点だ。

“Not the Opium of the People: Income and Secularization in a Panel of Prussian Counties”
Sascha Becker and Ludger Woessmann
2013, Working Paper.

著者らは、プロイセン王国の一部(現ドイツ北部)の1886-1911年におけるセンサスデータを使って、郡レベルのパネルデータを構築している。宗教への信仰心は聖餐式(Holy Communion)への参加者数、経済的豊かさは小学校教師の給与で測っている。

分析自体はシンプルで、以下の3つのモデルの推計結果を比較している:
 (1)プールド・クロス・セクションで郡の固定効果だけをコントロール、
 (2)プールド・クロス・セクションで年の固定効果だけをコントロール、
 (3)パネルで郡と年の固定効果をコントロール。
(1)と(2)では聖餐式への参加者数と小学校教師の給与の間に有意な負の相関がみられたが、(3)では有意な相関はみられなかった。つまり、相関はあるものの、宗教への信仰心が弱くなったのは経済的豊かさが要因ではないかもしれない。

プレゼンはすごくうまくて勉強になった。しかし、論文自体は彼の以前のQJE論文(Was Weber Wrong?)の副産物のようで小粒だった。

一方、夕飯のときに聞いた話が面白かった。上記のQJE論文のRevisionで大物マクロ編集者から「もっとデータがあるはずだから、探し出してもっと頑健性チェックしなさい」と言われ、9ヶ月かけて追加のデータを集めたらしい(特別な許可をもらって地下蔵書庫にもぐりこんだらしい)。そして、追加の頑健性チェックに編集者も納得したのだが、「追加の頑健性チェックは脚注にいれてくれ」と言われたらしい。つまり、脚注一つに9ヶ月費やしたわけだ…。QJE恐るべし。

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