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選挙制度改革が中国農村にもたらしたもの

今回は、北京大学CCERのYang Yaoがセミナーで発表したワーキングペーパーだ。
まだかなり荒削りな論文だが、こういう論文もあるよということで紹介したい。

これまで、民主化の経済への影響は、多国間比較で推計されてきた。しかし、民主化と一口に
言っても各国間で制度が異なるので、推計結果の解釈は難しかった。そこで、この論文は、
中国の「農村選挙の導入・実施状況が地域によって異なる」という特殊な状況を利用し、
同国内の地域間比較によって民主化の経済への影響を推計している。
キモは、主な制度は地域間(自治区は含まれていない)でほぼ同一なので、
選挙制度の違いという一側面に注目できる点だ。

“Accountability and Growth: The Costs of Village Democracy in China”
Monica Martinez-Bravo, Gerard Padro-Miquel, Nancy Qian, and Yang Yao
2010. Working Paper.
おすすめ度:
★★★☆☆ [星三つ]  中国研究関係者へ
★★★☆☆ [星三つ]  開発経済学関係者へ
★★☆☆☆ [星二つ]  その他の方々へ
 
中国農村では、村党支部と村民委員会という二つの組織が、村の行政を取り仕切っている。
そして、村民委員会を選ぶ制度は、1987年以前は「党が定員と同数の候補者を指名する」制度
だけだったが、1987年から「党が定員を上回る数の候補者を指名する」制度が導入され始めた。
要するに、「誰も落選しない選挙」から「落選者が出る選挙」になったわけだ。
さらに、1998年以降、村民が直接、候補者を指名する選挙制度(海选[HaiXuan]と
呼ばれている)が公式に導入され始める。実施状況は県(County)によって異なるが、
全体として、党よりも村民の意向がより強く反映される選挙制度になったわけだ。

この論文では、このような選挙制度改革により、村民委員候補者のアカウンタビィティが
党から村民にシフトすることで、農村の状況がどう変化したかを分析している。実証では、
National Fixed-point Survey (NFS)と、著者らがNFSの副標本に実施した農村選挙に
関する調査のデータを使っている。一番の難題は選挙に関する変数の内生性だが、
いい操作変数はみつからないと割り切って、Fixed EffectsとDifferences-in-Differences
を組み合わせた推計手法を使っている。

主な結果は、他の条件が同じならば、選挙制度改革により
  • 高所得者層の所得が減ることで、平均所得は低下したが、所得の不平等が削減された。
  • 村民の社会的状況が改善した(異議申し立ての減少、村民委員会の人員削減、
     村民の所有する資産の増加など)。しかし、改善の度合いはあまり大きくない。
このような結果は、選挙制度改革により候補者のアカウンタビィティがシフトしたという論理と
一致する。

ネタは面白いのだが、前述のとおり荒削りなので、色々とツッコミ所満載だ。ここでは
いちいち記さないが、「多国間比較の場合と比べて、なにか異なる発見があったのかどうか」
くらいは議論して欲しい。ただ、ネタの面白さだけで一読の価値はあるかもしれない。

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