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観察学習と顕著性と中国のレストラン

人が自分以外の人から何かを学ぶ方法は、主に二つある。直接交流して学ぶ方法と、
観察して学ぶ方法(観察学習)だ。この論文のキモは、レストランでのフィールド実験を
通して、観察学習の効果[Observational learning effect] を厳密に実証した点だ。

“Observational Learning: Evidence from a Randomized Natural Field Experiment”
Hongbin Cai, Yuyu Chen, and Hanming Fang
2009. American Economic Review 99(3): 864–882
おすすめ度:
★★★★☆ [星四つ]  開発経済学関係者へ
★★★☆☆ [星三つ]  農業経済学関係者へ
★★☆☆☆ [星二つ]  その他の方々へ

「他人の選択を見ること」が人の選択に影響するとき、少なくとも3つの可能性がある:
 1. 他人の選択からなにかしらの情報を読み取ったため (観察学習の効果)
 2. 他人の選択が単に目に付いたため (顕著性の効果 [Saliency effect])
 3. 他人と同じ事をしたいため (同調の効果 [Conformity effect])。
既存の研究では、「他人の選択を見ること」の影響を推計するとき、これら3つの効果を十分に
区別できておらず、その推計値が本当に観察学習の効果なのかわからなかった。

この論文では、北京にある眉州东坡(Mei Zhou Dong Po)酒楼というチェーンレストランで
フィールド実験を行い、同調の効果は無視できるほど小さいと仮定した上で、観察学習の効果と
顕著性の効果を分けて推計する。この実験では、テーブルごとに顧客を
 グループ1:普段のメニュー (コントロールグループ)
 グループ2:普段のメニュー+人気ランク付きトップ5料理のリスト (観察学習+顕著性)
 グループ3:普段のメニュー+人気ランクなしトップ5料理のリスト (顕著性のみ)
の三つのグループに分けている。そして、Difference-in-Difference (DD)を用いて、
「グループ1と2の違い」と「グループ1と3の違い」の差を「観察学習の効果」として
推計している。さらに、「実験前のDD」と「実験下のDD」の差をとり(Trip Differencing)、
観測不可能な要素の影響も検証している。 

レストラン経営者や従業員の意向との兼ね合いから、理論的にベストな枠組みではなく、
セカンド・ベストな枠組みでしか実験できなかったという記述も参考になった。

主な結果として、他の条件が同じなら、
 • 人気ランク付きリストがあることで、「トップ5料理が注文される確率」が13-20%増えた。
 • 人気ランクなしのリストだけでは、「トップ5料理が注文される確率」は増えず、
    顕著性の効果はみられなかった。
 • そのため、13-20%の増加は、観察学習の効果による可能性が高い。
つまり、人の意志決定時における観察学習の重要性を実証したわけだ。政策的含意として、
「ウェブ上などで情報提供するときに人気情報を含めたほうが、人の選択への影響が大きい」
などをあげている。

それにしても、レストランでの実験をもとに、ここまで話を大きくするのか・・・と感心した。

訂正:主な結果に関する記述で、「注文量」を使っていたが、より正確には「注文される確率」への
影響を推計している。

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