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一時的補助金でマラリア対策の新製品の採用を長期的に促進できるのか?

世の中には「高い利益が見込めるのに、なぜか広く普及していない技術」が多々ある。
今回の論文は、そのような技術の一つとして、マラリア対策用の
殺虫効果が長期間持続する蚊帳(LLIN)に注目している。

この論文のキモは、「LLIN購入のための一時的補助金を一部世帯に支給することで、
経験による学習(Learning by doing)と社会的学習(Social learning)の影響により、
その他の世帯を含めた地域全体のLLINの採用を長期的に促進しうる」ことを
フィールド実験を用いて示した点だ。

“Short-Run Subsidies and Long-Run Adoption of New Health Products:
Evidence from a Field Experiment”

Pascaline Duptas
Working Paper, February 2010.
おすすめ度:
★★★★★ [星五つ]  開発経済学関係者へ
★★★★☆ [星四つ]  医療経済学関係者へ
★☆☆☆☆ [星一つ]  その他の方々へ

まずは理論的に、新しい予防技術を採用するための補助金を単発で支給した場合、
「経験による学習」と「社会的学習」が長期的な採用に影響することを示している。
また、これら影響は、その技術の効果や使用コストに関する採用以前の信念(belief)
しだいで正にも負にもなることを明らかにしている。そのため、理論的に補助金の
影響を予測することは難しい。しかし、このように潜在的影響を明らかすることは、
実験デザインや計量結果の解釈をするうえで不可欠だ。

フィールド実験では、ケニア西部の1,120世帯を対象に「補助金額の異なるLLINとの引換券」を
ランダムに配布している。そして、その補助金が、経験による学習や社会的学習を通して、
世帯のLLIN購入、LLIN使用、およびLLINへの支払い意志額(willingness to pay)に
どう影響するか分析している。実験デザインの詳細は論文を参照して欲しいが、
二重三重に実験が仕込んであって、一読の価値ありだ。

主な結果は、
 ・ LLINの価格は、購入率には大きく影響するが、使用率にはあまり影響しない。
 ・ より多く補助金を受けた世帯は、経験による学習と所得効果の影響で、
   LLINの追加購入により積極的だった。一方、アンカリング効果(Anchoring effect)
   や資格効果(Entitlement effect)による買い控えの可能性(支払い意志額の低下)
   はみられなかった。
 ・ この補助金によって他の医薬品が買い控えられる可能性(Cross-product entitlement
   effect)を調べるため、水を塩素消毒するWaterGuardという薬剤の購入率もフィールド
   実験で分析したが、そのような可能性はみられなかった。
 ・ 近所でLLINを使っている世帯が増えると、その他の世帯がLLINを少なくとも一つ購入する
   確率が高くなった。
全体として、補助金に対してかなり肯定的な結果となっている。

しかし、結論にあるように、今回のLLINを取り巻く環境は色々な意味で恵まれていた。
また、補助金を支給したのが政府ではなく研究機関だった点も、対象世帯の行動に
影響したかもしれない。そのため、他の事例への示唆を導き出すには、かなり注意が必要だ。

実験や分析が丁寧で、英語もわかりやすく、かなりお勧めの論文だ。

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