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情報と経験と条件反射:なぜ実物を提示されると支払意志額が増えるのか?

「欲しい物を実物で提示されると、文字や写真だけで提示されるより、より魅力的に感じる
傾向がある。」というのは、既存の研究でも、経験的にも、広く知られている事実だ。
しかし、なぜ人間はそう感じてしまうのか?理由として、情報量や過去の経験など諸説紛々ある。

そんな中、「物の存在そのものに対する人間の条件反射的(本能的?)行動」が要因である
可能性を示したのがこの論文のキモだ。

“Pavlovian Processes in Consumer Choice: the Physical Presence of a Good Increases Willingness-to-Pay”
Benjamin Bushong, Lindsay M. King, Colin F. Camerer, and Antonio Rangel.
2010. American Economic Review, 100(4): 1556-1571.
おすすめ度:
★★★★☆ [星四つ] 消費者行動の研究者へ 
★★★☆☆ [星三つ] 農経(経営含む)関係者へ
★☆☆☆☆ [星一つ] その他の方々へ

ラボ実験はCaltechの学生を対象に実施している(参加報酬はUS$20)。メイン実験では、
学生57名が菓子の競売に参加している。80種類もの菓子が用意されている。
競売はBDM(Becker-DeGroot-Marschak)方式で、参加者は競売用にUS$3渡される。
ポイントは、競売時に3つの異なる方法(文字のみ、写真のみ、実物)で菓子が提示される点だ。
そして、それら異なる提示方法の掛け金への影響を分析している。
競売後、結果に関係なく、参加者全員を実験室に30分間残らせるというのも面白い。
つまり、なにも競り落とせなかった人は、飲まず食わずで30分間待つことになる。

メイン実験の結果を説明するために、追加で異なる3つの実験を実施している。
食品の匂いの影響を調べるために、匂いのない小物類の競売をしたり。
過去の経験の影響を調べるために、味見付きの食品の競売をしたり。
パブロフ的な刺激(例:犬の実験での鈴の音)の影響を調べるために、
実物を透明のケースで囲って競売したりしている。

主な結果は、
 • 競売のときに実物を提示することで、参加者の支払意志額が著しく増えた(文字や写真
   だけの場合と比べ、約60%の増加)。つまり、有意な実物提示効果(real-exposure
   effect)がみられた。 
 • 有意な実物提示効果は、食品や安い小物類、参加者が好きなものや嫌いなもの、など
   あらゆる品物の競売でみられた。
 • 一方、写真、匂い、味見、透明のケースなどの操作は、支払意志額に有意に影響しな
   かった。つまり、情報量や経験では実物提示効果を説明できない。
 • そのため、実物提示効果は「品物の存在そのもの」によって引き起こされた「パブロフの
   完了過程」(Pavlovian Consummatory Process)で説明できる可能性が高い。
これら結果は、実際のビジネスへの示唆も含んでいる。例えば、レストランで、文字や写真の
デザートメニューに比べ、実物を見せるデザートトレイの方が売り上げが上がる可能性がある。
トレイに透明のケースを付けてはいけないのもポイントだ。他にも、商品パッケージの規制や
ネット販売などへの示唆も挙げている。

それにしても専門外の用語が多いし、“Pavlovian Consummatory Process”など造語?も
多くて、和訳がかなり面倒な論文だった。やっぱり、英語は英語のまま読むのが一番楽だなぁ。

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