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科挙廃止と人的資本と近代化

今回は、新しく始まったセミナーシリーズの初ゲストNoam Yuchtmanの論文だ。
彼は、今年からUCバークレー校のHaas(MBA)で教え始めたトップ若手研究者だ。

この論文は、科挙廃止と近代的教育制度の導入が中国の近代化と経済発展に与えた影響を、
ミクロの視点から検証しようとしている。キモは、伝統的教育と近代的教育の下では
異なる種類の人的資本が形成されたことを、労働市場データを使って実証した点だ。

“Teaching to the Tests: An Economic Analysis of Traditional and Modern Education in Late Imperial and Republican China”
Noam Yuchtman
2010. Working Paper.
おすすめ度:
★★★★☆ [星四つ] 歴史データを使う方へ
★★★☆☆ [星三つ] 開発経済学関係者へ 
★☆☆☆☆ [星一つ] その他の方々へ

アヘン戦争以後、中国でも近代化の必要性が叫ばれるようになった。その一環として、
清朝末期の1905年に科挙制度(官吏登用のための試験制度)が廃止され、近代的教育制度が
導入され始めた。1912年には中華民国が成立し、教育制度の近代化がさらに推し進められた。
この論文では、このような近代的教育制度の導入が中国の近代化に貢献したかどうかを検証
するために、労働市場の結果に注目する。つまり、伝統的教育に比べ近代的教育のほうが
近代化への貢献が大きかったなら、その貢献は労働市場に反映され、近代的教育を受けた
従業員の方がより高い賃金(賃金プレミア)を受け取ったはずである。

データは、津浦鉄路(JinPu Railroad)の従業員の1929年の人事記録(829名)を使っている。
津浦鉄路は1912年に完成した天津‐浦口(南京)を結ぶ鉄道だ。歴史データにしては、学歴や
職種のデータが充実している。学歴はまず始めに、伝統的、近代的、軍、警察、非熟練、と
おおまかなカテゴリに分けられる。そして、より細かく13のカテゴリに分けられる。
職種は、警察、機械、道路、事務、鉄道、管理のカテゴリに分けられる。

主な結果は、
 ・ おおまかな学歴カテゴリでは、伝統的と近代的の両カテゴリとも非熟練と比べて同程度の
   賃金プレミアがあった(30%-45%)。より細かいカテゴリでは、大学と工学系職業訓練
   の賃金プレミアが高かった(68%-100%)。
 ・ 他の教育カテゴリに比べ、近代的教育を受けた人は管理職に就く確率が最も高く、伝統的
   教育を受けた人は事務職に就く確率が最も高い。
これら結果は、近代的教育の導入が中国の近代化に貢献したことを(間接的に)支持している。
一方で、伝統的教育のプレミアも特定の職種で維持されたことを示している。

設定はうまいのだが、これといった“売り”がない気がする。また、識別問題や、結論の一般化に
関する問題で悩んでいた。今のところ、トップフィールドジャーナルも厳しいかもしれない。
彼のそんな話を聞いて、データの重要性を改めて認識した。

P.S., 英国の歴史データを使った彼のJob Market Paperは段違いに面白い。近いうちに
改めて紹介したいところだ。また、AcademicとFriendlyのバランスが絶妙な好青年で、
英語のプレゼンやコミュニケーション(ワードチョイスなど)の面でもすごく勉強になった。

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