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フードスタンプと肥満と医療サービス支出 

日本にいると実感が湧きにくいが、米国では肥満は大きな社会問題になっている。
また、米国では貧困層に肥満の人が多いことから、フードスタンプ(FSP)のような貧困対策と
肥満の関係も注目を集めている。そして、当時までのFSPと肥満に関する論文は、
「肥満への影響」までで思考停止していた。

今回の論文は、もう一歩踏み込んで、FSPの医療サービス支出への影響もあわせて
分析している。肝は、FSPの健康に対する悪い影響と良い影響の両面を明らかに
したところだ。

"Does Participation in the Food Stamp Program Increase the Prevalence of Obesity and Health Care Spending?" (Outstanding AJAE Article Award)
Chad D. Meyerhoefer and Yuriy Pylypchuk 
American Journal of Agricultural Economics. 2008. 90(2): 287–305
おすすめ度:
★★★★☆ [星四つ] 農業経済学関係者へ
★★★★☆ [星四つ] 「肥満」や「食料費補助などの貧困対策」の研究者へ
★★☆☆☆ [星二つ]  その他の方々へ

メインは実証分析で、けっこう込み入っている。
肥満への影響の推定にはDiscrete Factor Model (DFM)、
医療サービス支出への影響の推定にはCorrelated Random Effects Two-part Model
(CRE 2PM)を使っている。また、FSP参加の内生性に対処するため、操作変数として、
FSPに対する取り組みの州間での違いを利用している(FSPを推進するための
福祉活動への支出、FSPの受給・更新条件[指紋採取の有無など])。
しかし、DFMはいいとして、CRE 2PMはけっこうきわどい。
他方、「FSPの医療サービス支出への直接的影響」と、「FSPの肥満への影響を
通した医療サービス支出への間接的影響」を分けて推定しているのは面白い。

主な結果として、他の条件が同じならば、
   1.女性のFSP参加者は非参加者と比べて肥満になりやすい(確率が6.7%高い)。
   2.女性のFSP参加者は非参加者と比べて医療サービス支出が多い(年間USD$94多い)。
   3.FSPの医療サービス支出への影響の93-99%は直接的影響によるもの。
   4.上記のような傾向は、男性の間ではみられなかった(もしくは弱かった)。
肥満への影響だけをみてFSPを批判するのは早計なことを実証しており、
FSP関係者にとって喜ばしい結果だ。ただ、医療サービス支出の増加が健康に
良いかどうかは疑問の余地ありだろう。

自戒を込めて言わせてもらうと、単に「肥満が増えた」と示すだけでは分析として芸がないよ、
と教えてくれる論文だ。「肥満」の部分を別の単語に置き換えても、色々と当てはまる例が
多そうだな…。

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