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農家の気候変動への適応と食料保障への影響@エチオピア

AJAEのv.92 n.2はProceedingsだったので飛ばして、
v.92 n.3から2本ほど選んで紹介したい。
一本目はエチオピア農家の気候変動適応技術の採用とその効果に関する論文だ。

サブサハラ・アフリカでは、既にかなり厳しい気候(気温が高く雨が少ない)なのに、
今後さらに気温が上がると予測されている。そして、この地域で主流の天水農業は
そんな気候変動の影響をもろに受けてしまう。このままでは、わずかな気温上昇(1-2度)
でも何十%という収量減につながりかねず、深刻な食糧不足に陥る可能性があるのだ。

一方、これまでの気候変動に関する研究は、上記のような気候変動の影響に
注目した研究が多く、気候変動適応技術の普及やその効果に関する研究はまだ少ない。
そのため、この論文では、農家が気候変動適応技術(品種変更、水・土壌の保全など)
の採用を決める要因と、それら技術の採用による生産性への影響を検証している。

この論文のキモは、(技術採用は生産性を向上すると仮定して)技術採用の問題だけ
を分析するのではなく、技術採用の生産性への実際の効果にまで踏み込んで
実証した点にある(と思う)。

“Does Adaptation to Climate Change Provide Food Security? A Micro-Perspective from Ethiopia”
Slvatore Di Falco, Marcella Veronesi, and Mahmud Yesuf
2011. American Journal of Agricultural Economics, 93(3): 829-846.
おすすめ度:
★★★★☆ [星四つ] 開発+気候変動問題の研究者へ
★★★☆☆ [星三つ] アフリカ系の農経研究者へ
★☆☆☆☆ [星一つ] その他の方々へ

調査は2005年にエチオピアのNile Basinの農家1,000戸に対して実施された。
この調査では主に「農家の気候変動への認識、理解、そして対策」に関するデータを
集めたらしい。推定には、技術採用の内生性と農家の異質性を考慮に入れた
同時方程式モデルを使っている。

主な結果は
 ・農家が気候変動適応技術の採用を決める要因は、借り入れ、普及事業(エクステンション)、
  そして技術情報へのアクセス。
 ・最近の気候状況は、技術採用の決定に影響しない。一方、肥沃な土地を持つ農家は、
  他の農家に比べ、適応技術を採用する確率が低い。
 ・技術採用の内生性を無視した場合(OLSの結果では)、適応技術採用の生産性への
  有意な効果はみられない。
 ・しかし、技術採用の内生性と農家の異質性を考慮したモデルを使うと、
  適応技術採用の生産性向上への有意な効果がみられた。
 ・適応技術採用による生産性向上の効果は、既に適応技術を採用している農家より、
  まだ適応技術を採用していない農家のほうが大きいかもしれない。

結論として、気候変動適応技術の普及は全農家の食料保障の改善に貢献でき、
更なる普及が望まれる。そのためには、借り入れや普及事業(特に技術情報)への
アクセスを改善する必要がある。

栄養情報と味の好みとGM作物への支払意志額

二本目。
この論文は、ウガンダにおける消費者の「ビタミンAをバイオ強化したスウィートポテト(OSP)」
への支払意志額をより厳密に推計しようと試みている。この論文の(個人的な)キモは、
消費者の知識や味の好みが支払意志額に影響することを実証した点だ。

“Are Consumers in Developing Countries Willing to Pay More for Micronutrient-Dense Biofortified Foods? Evidence from a Field Experiment in Uganda”
Shyamal Chowdhury, J. V. Meenakshi, Keith I. Tomlins, and Constance Owori
2011. American Journal of Agricultural Economics, 93(1): 83-97.
おすすめ度:
★★★★☆ [星四つ]  途上国の微量栄養素栄養失調の研究者へ 
★★★★☆ [星四つ] アフリカでのGM作物の需要が気になる方へ

主な結果は、
 • OSPへの支払意志額が、「GMであること」や「見た目や味の違い」により、
  既存のスウィートポテト(TSP)への支払意志額を有意に下回ることはなかった。
 • TSPよりOSPの方が栄養価が高いという情報を与えると、TSPに比べOSPへの
  支払意志額が約25%高くなった。
 • 消費者の味の好み次第で、OSPへの支払意志額がTSPへの支払意志額より
  高くなったり低くなったりしうる。

この分析は消費者サイドに注目したもので、生産者や環境の問題は全く考慮されていない。
ただ、消費者がGM作物にどれくらい多く(もしくは少なく)支払いたいかという情報は、
生産者が利益を出せる投入財や投資財の価格(種子、肥料、灌漑など)を議論する上で
不可欠だと思われる。

GM作物の賛否に関しては、賛否両サイドともに一方的な(感情的な?)議論が多い。
そんな問題だからこそ、データに基づいた証拠の積み重ねが重要になってくると思う。
しかし、AJAEに反GM論文が載ることはなさそうだなぁ…。
ヨーロッパ系の学術誌(ERAEやFP)ならいけるかもしれない。

この号には、これら二本以外にも開発系の論文(マイクロファイナンスなど)が多くて面白かった。

途上国のパネル調査で移住世帯を追跡調査するべきか?

タイトルに農経とあるのだから、もっとAJAEの論文を紹介しようと思い立った。
まずは、手元にある最新号(2011 93(1))から気になる論文を二本ほど紹介したい。
できれば次号以降も続けていきたいところだ。

まずは、一本目。
途上国のパネルデータ分析における「移住による標本脱落の影響」を分析した論文だ。
キモは、移住世帯の異質性(異なる移住の理由など)を考慮に入れて分析している点だ。

“Should We Track Migrant Households When Collecting Household Panel Data? Household Relocation, Economic Mobility, and Attrition Biases in the Rural Philippines”
Nobuhiko Fuwa
2011. American Journal of Agricultural Economics, 93(1): 56-82.
おすすめ度:
★★★★☆ [星四つ]  途上国のパネルデータを扱う方へ 

著者はフィリピン農村でパネル調査+移住世帯の追跡調査を実施している。
主な結論として、
• 標本と母集団の関係性を分析する上で、移住による標本脱落(10%程度)の影響は小さい。
• 移住世帯の異質性が、標本脱落の影響を小さくしている要因かもしれない。

中国におけるパネルデータ分析でも移住世帯の標本脱落は
重要な問題(=よく尋ねられる質問)で、この論文の結果はかなり参考になる。
願わくば、誰か中国のデータで同様の分析をしてくれないかなぁ…。

また、こういう研究をきちんと評価したAJAEを見直した次第だ。
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